今日もあいかわらず「日本で最も高級な街」として繁栄する銀座。
そんな銀座を汐留方面へ歩いてゆくと、大通りに連なる”高級建築”とは雰囲気の異なる、奇想天外な形をした建築が姿を現します。

そのレトロフューチャーな佇まいは多くの人々の関心を惹きつけてやまず、建築ファンならずとも広く知れた存在として、この瞬間も世界の人々を魅了しつづけているのです。

ここではそんな中銀カプセルタワービルについて、4つのキーワードで簡単に説明していきます。

 

1. カプセルタワーはメタボリズム建築の代表作
2. そもそもメタボリズム建築って?
3. カプセルタワーは「部屋ごと取り替え可能なマンション」
4. 築44年、建て替えについての問題

 


「カプセルタワー」はメタボリズム建築の代表作


 

中銀カプセルタワービル(なかぎんカプセルタワービル)は、黒川紀章が設計し、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅です。1972年(昭和47年)に竣工されました。

 

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黒川紀章といえば数多くの名建築を生み出した日本を代表する建築家で、その作品には六本木に波打つガラスの建築「国立新美術館」などが有名です。この「中銀カプセルタワービル」は黒川紀章の初期の代表作であるとともに、メタボリズム建築の代表的な作品として歴史に名を刻んでいます。

 


そもそもメタボリズム建築って?


 

ここで簡単に、日本を席巻した有名な建築運動「メタボリズム」についておさらいしましょう。

メタボリズムとは「新陳代謝」の意味で、1959年に黒川紀章や菊竹清訓など、日本の建築家・都市計画家グループが開始した建築運動です。
高度経済成長期のニッポン。彼らの考えた未来都市は、当時の日本の「人口の増加」と「都市の急速な発展」という問題を解決するためのものでした。

 

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ふつう建築というのは、いちど建ててしまえばそう簡単にはカタチを変えられないものですが、なんとメタボリズム建築は変幻自在にカタチを変えることができます。

まるで古い細胞があたらしい細胞に入れ替わるように、古くなったり機能が合わなくなったりした部屋をまるごと「最新の部屋」と取り替えることで、「トーキョーの急成長や急変化に対応することができるじゃないか!」という画期的なアイデアが、メタボリズム建築の特徴なのです。

そのアイデアは建築のみにとどまらず、大規模な都市計画として「海上都市」「塔状都市」「新宿ターミナル再開発計画」などが構想され、新陳代謝する巨大都市のアイデアにまで発展してゆきました。

…しかし、この素晴らしい巨大都市のアイデアが実現することはありませんでした。中銀カプセルタワービルは、メタボリズム思想が実際のものとして現実化された、歴史的にも貴重な建築なのです。

 


カプセルタワーは「部屋ごと取り替え可能なマンション」


 

鳥の巣箱を積み重ねたような(日本国外からの見学者にはドラム式の「洗濯機を積み重ねたような」と表現される)特異な外観は、ユニット製(部屋ごとに取り替え可能な)マンションであることの機能をダイレクトに表現し、そのメタボリズムの設計思想を明確に表現したデザイン性は高く評価されています。

 

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また、高度経済成長期のビジネスマンのセカンドハウス・オフィスとして想定されたその内装は、ベッド、エアコン、冷蔵庫、テレビ、収納などが作りつけで完備されており、そのカプセル専用にデザインされた内装も、建築同様、国内外から高い人気と評価を得ています。

 

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この世界観、いかがでしょう?
レトロかつ未来的な風貌に、魅力を感じる方も多いのではないでしょうか。

 


築44年、建て替えについての問題


 

さて、そんな中銀カプセルタワービルですが、竣工から44年が経過して設備の老朽化が問題となり、建て替えが検討されています

しかしそこは世界中にファンの多い中銀カプセルタワービル。保存派の意見も根強く、2014年にクラウドファンディングで寄付を集めた際には目標150万円に対して最終的に200万円以上が集まっています。

この貴重な建築を取り壊してしまうのか?それとも世界遺産になりうるこの建築を修繕して大切に保存してゆくか?現在もその議論は続いていますが、2014年に黒川紀章建築都市設計事務所から大規模修繕工事のプランと見積もりが提出されており、このまま大規模修繕の実施に舵を切れば、十分に保存が可能であるという見通しが出ています。

 

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[荒れるにまかせた状態のカプセル(左)を、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトにより綺麗にリノベーション(右)。]

 

「ブロークン・トーキョー展」では中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトにご協力いただいており、作家の石井七歩もその意向に賛同しています。これを機に中銀カプセルタワーの保存問題にご興味をお持ちいただければ幸いです。

 


【参考・参照】

写真:中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟(青月社)より

「中銀カプセルタワービル」を未来へ! 世界遺産になりうる建築の保存・再生に直結する、ビジュアル・ファンブックの出版《MotionGallery》

中銀カプセルタワービル《Wikipedia》

黒川紀章代表作のカプセルタワー、存続か解体か 銀座 《朝日新聞》 2016年5月20日